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姫路 和菓子 甘音屋の最新情報

2017年5月 1日

ベトナム 首都ハノイに

当社に和菓子職人は3名いる。「『ゆっくり、丁寧、かつ正確』では

 

なく、『早く、丁寧かつ正確』に仕事をこなす。これが職人である」

 

職人への指導の際に出る私の口癖である。とにかく職人とはその道を

 

極めるべく「他人の追随を許さない集団」だと常々指導している。

 

今では指導の甲斐あってか、私が不在でも黙々と和菓子作りに勤しんで

 

くれる頼もしい「集団」である。

 

 

そんな彼らに仕事を任せて、先日ベトナムへ行ってきた。もちろん

 

仕事。新店のオープンに向けて備品を調達する為である。 

 

飛行機に揺られること5時間、首都ハノイの空港に到着した。まだ

 

朝晩が肌寒い日本とは違い、とにかく蒸し暑い。厚手の洋服が

 

現地人ではなく観光客の証であるかの様に、出国手続きは意外にスム

 

ーズだった。

 

続いて事前に預けた荷物を受け取るためターンテーブルへ。「これも

 

ちがう」「あれもちがう」とよく似た荷物を目で追いながら自身の

 

荷物を待つこと三十分、ようやく出て来たと思えば他人のバッグ。

 

機内から私の手元まで、荷物の流れはどうなっているのだろう?荷物

 

運搬の担当者は機械が動いているのを談笑しながらゆっくりと積み込

 

んでいるのか?それともまだシステムが整備されていないのか?と

 

イライラしていると、ようやく荷物が姿を現した。待ち時間は四十五

 

分をゆうに超えていた。 

 

普段、荷物を預けることのない私にとっては、長く感じたものの「ま

 

あこんなもんか」と気持ちを切り替えて、出口で待つ現地案内人へと

 

を走らせた。 

 

その後、空港を出て車に荷物を積み込み、市街地へ。高速道路から見え

 

 

る景色は新鮮で、どこか懐かしさを感じた。雑然とした街の「雰囲気」

 

が高度成長期後半に生まれた私のかすかに残っている記憶と重なった。

 

雰囲気と表現したが「かおり」という表現の方がしっくりくるかもしれ

 

 ない。

 

 

交通は韓国や香港の様に地下鉄も無く、電車も貨物が中心。移動の多く

 

は車だが、短距離の移動は全てオートバイ。通学、通勤、荷物の配達、

 

買い物、子供の送り迎えは、子供を二人乗せて三人乗りで走る者もい

 

る。ヘルメットも着けずに指示機を出さない人も多く、交通ルールなど

 

あったものではない。

 

信号待ちでは車と車の間に割り込んでくる。その数は計り知れず。表現

 

するならば満員電車に人が押し寄せ、どんどん身動きが取れなくなる。

 

そんな光景はさすがに日本で経験がない。

 

また舗装されていない道路で物資を運ぶトラックが、大きな音を立てて

 

弾みながら走る。ルールが無い中、自身の存在を知らせる為、「小刻

 

み」に、時に「強く」クラクションを鳴らすオートバイ。道路脇ではそ

 

んな騒音に負けまいと、大きな声を張り上げて物売りをする人々。発展

 

途上の国が奏でる「人・モノ・金」の三重奏であり、力強い国力を感じ

 

る。

 

しかしそんな国の「勢い」の話だけではない。間違いなくベトナム製品

 

の品質は上がっている。二十年ほど前にベトナム製の漆器を購入した

 

が、塗りムラ、はがれが酷く、安価だけに文句さえ言えないが、日本の

 

漆器とは比べ物にならないモノだった。

 

しかし、今回手にした漆器は安価でありながら、それなりの品質に仕上

 

がっている。またデザインも日本や欧米諸国に引けをとらない、なかなか

 

のものである。 

 

さて我々が生きて来た「小売り」のことに少し触れたいが、ベトナムの

 

商売はかなり強引である。強引というよりは「買って欲しい」という強

 

い意思が伝わって来る。「よく」も「悪く」も。土産品を買いに行って

 

も、何を言っているかわからないが、一生懸命に商品説明をしているこ

 

とは理解できる。ただ客に気持よく買い物をしてもらうことや、日本人

 

が大切にする「間」(ま)の様なものがない。

 

これはベトナムと日本の文化、慣習の違いかもしれないが、同じ商いを

 

する上で「気持ちよく買い物をしてもらう間」は世界共通であってほし

 

い。というよりは「相手の立場に立って行動をするサービス精神」を

 

持ってほしい。

 

ところがそんな中、帰路の空港で「同志」に出会った。沢山の買い物袋

 

をぶら下げた私を見て、何も言わず小さく微笑み、大きな袋を差し出し

 

てくれた販売員がいた。「同志」である。「相手の立場に立とう」その

 

意思が強く伝わった。

 

「同志」に会えたその喜びついでに、「同志」の店で買い物をしたが

 

「同志」は裏切らなかった。ベトナムではどこで買い物をしても、買い

 

物袋は一枚だけ。いくら沢山買い物をしても一枚である。経済的な事情

 

が見え隠れするが、どこも催促すれば付けてはくれる。

 

だが、あまりいい顔はしない。

 

しかし「同志」は何も言わなくとも、購入した数の袋を入れてくれた。

 

言葉は通じなくともサービス精神は伝わる。これが私の求めている「世

 

界共通意識」である。

 

ベトナム滞在最終日にして「同志」に会えてよかった。今度訪れたとき

 

「同志」がどのくらい増えているか楽しみである。

 

かつて「発展途上国」であった中国は日本を抜いて、世界第二位の経済

 

大国となっている。また、日本の後ろにはインドが迫っている。それに

 

比べ、技術の進歩、海外企業の進出、経済成長、まだまだ発展途上とは

 

いえ、この国の力は未知数で脅威である。帰路はそんな事を考えなが

 

ら、いつの間にか機内で眠ってしまっていた。

 

目がさめた時はすでに飛行機は着陸しており無事日本に帰ってきた。も

 

ちろん迎えは必要ない。慣れたホームグランドゆえ気楽である。預けた

 

荷物を待つこと十五分、ターンテーブルから出て来た。

 

荷物一つだけの事だが「速く、丁寧、正確」に出て来た。日本人の職人

 

魂は、まだまだ健在である。ベトナムはこの三十分の時間の差を何年か

 

かって縮めてくるのだろう?

 

街の開発が進む事は歓迎したいが、贅沢を言うならば、私の記憶にある

 

地良い、懐かしい「かおり」は残してほしい。 

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